米インターネット音楽批評メディア「PitchFork」の登場で米インディ・シーンの魅力が広く知られて、Fleet Foxes、Bom Ivor、Beirutといったアーティストは、アメリカのシーンを代表するアーティストとなっていることは、異論のないところだろう。
最近のブラジルの音楽シーンで、ローカルな動きながらも注目に値すると思うのは、PitchFork系の米フォークシーンに共鳴するような宅録系のアーティストの登場だ。
ブラジルの都市のインディペンデントシーンについて、ロス・エルマーノスの活躍以降、ブラジルの「カレッジチャート」的なところの主流は、ガレージ系のロックだったが、その次の流れとして、2011年に非常に優れた才能が数多く開花したという印象を持っていて、1つの潮流はこれから取り上げる「ブラジリアン・ニューフォーク」と呼べるような人たち。それからもう1群、ヒップホップ系のアーティストたちである。これについても後日取り上げたい。
まず、『アパートの歌』というアルバムタイトルから、ブラジルの新世代宅録系アーティストの登場を印象づける傑作が、Cícero (シセロ)の『Canções de Apartamento』。リオ郊外のサンタクルス出身の25歳の1stアルバムは、2011年のブラジルのインディーシーンの話題の中心だった。まず、PVを見ていただいて、もし気にいったらアルバムは彼のサイトでDLがオープンにされている。(以降についても、紹介しているDLリンクは全てオフィシャルなものだ)
●Cicero – Canções de Apartamento

DL http://www.cicero.net.br/
試聴 http://www.rockinpress.com.br/2012/01/08/os-100-melhores-albuns-brasileiros-de-2011/pt-br.facebook.com/cancoes.de.apartamento
────────────────────────────────────────────────
次に紹介したいサンパウロ出身の日系ブラジル人のアーティストDan Nakagawa(ダン・ナカガワ)は、米インディと共鳴すると言っても、フォーク寄りのアーティストよりも、Rufus WainwrightやANTONY & THE JOHNSONSといった、より耽美的な世界観を持つアーティストを比較対象にしたくなる音をしている。下のPVで最初に登場するのが本人。こちらもオフィシャルサイトで、アルバム全体のDLがオープンだ。
●Dan Nakagawa – Oposto de dizer adeus

DL http://www.dannakagawa.com.br/download/
試聴 www.myspace.com/dannakagawa
────────────────────────────────────────────────
このアーティストは、まだ一度もコンサートを行ったこともないアーティストだが、エレクトロミュージックの祭典のサンパウロ開催版Sonar São Paulo(James Blake, Bjork, Mogwaiらが出演)への出演が決まっている。Silva(シルヴァ)は、サンパウロ在住のLucio Souza(ルシオ・ソウザ)のソロ・プロジェクトで、宅録作品ながらウキウキした気分になるような雰囲気がある。
●Silva – Silva

DL http://www.mediafire.com/?c1yjzotpb0b5qdi
試聴 http://www.facebook.com/listentosilva?sk=app_178091127385
────────────────────────────────────────────────
Transmissor(トランスミソール)は、バンドなのでここで紹介している他のアーティストに比べると、宅録系といってもロック寄りの音だが、男女のハーモニーでの、時にとても繊細な音は、これまでのブラジル・ロックとひと味違っている。ミナス出身。
●Transmissor – Nacional

試聴 http://www.melodybox.com.br/transmissor
────────────────────────────────────────────────
この括りで紹介する際に、これまでに3枚のアルバムを発表しているMomo(モモ)も忘れたくない。Momoは、Marcelo Frota(マルセロ・フロータ)のソロ・プロジェクトで、如何にもシンガーソングライター然とした佇まいの音を作る。
●Momo – Serenade of a Sailor
![image[3]](http://tupiniquimjp.files.wordpress.com/2012/02/image3.png?w=300&h=300)
試聴 http://www.myspace.com/momoproject
────────────────────────────────────────────────
────────────────────────────────────────────────
他にも一聴の価値のある下記の作品もDLがオープンにされている。
●Pipo Pegoraro – Taxi Imã
DL http://www.amusicoteca.com.br/?p=132
試聴 http://soundcloud.com/pipopegoraro
────────────────────────────────────────────────
●Wady Issa Fernandes
DL http://www.dessambando.com/
試聴 http://www.myspace.com/wadyissafernandes
────────────────────────────────────────────────
────────────────────────────────────────────────
昨年はメジャーなアーティストからも、Pitty(ピティ)の新プロジェクトAgridoce(アグリドーシ)の『Agridoce』、Mallu(マルー・マガリャェンス)の『Pitanga』、Marcelo Camelo(マルセロ・カメロ)『Toque Dela』といったフォークに共鳴する良作が多かった。
またフォークではないのだが、ごく近作でいえば、Céu(セウ)がニュー・アルバム『Caravana Sereia Bloom』で、米インディの音を踏まえた上で、ダブのレトロ調の解釈という独創的な音づくりをしている。
────────────────────────────────────────────────
音楽家一家だったりする一部の恵まれた環境のアーティスト以外にも、十分に自分の表現したい音を表現できうるだけの宅録環境がブラジルで広まってきたことが、ここで紹介したアーティストの登場とその作品の素晴らしさによって、はっきりわかる。米で起こったようにインディペンデント系のアーティストが、音楽界の中心になるというような現象は、今のところブラジルでは期待できないし、このような室内向きのフォークミュージックの潜在的リスナーは、欧米や日本に比べたらブラジルには少ない気がする。が、音楽的な質で言えば、米の新世代フォークのアーティストに負けていない作品が出てきている。DLをオープンにしている作品も多いことだし、ぜひ、日本の幅広い音楽ファンの人に彼らの作品が届いて欲しい。
